メッセージ

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太古の祖先の洞窟に想う

百八十万年前ごろアフリカ大陸から地球上各地に拡散した我々の祖先たちは、それぞれ土地の環境に自分たちを密着させて生きながら、五十万年程相前後して、あちらこちらの洞窟で暮らすようになった。
狩猟採集に限られた貧しい生活の手段しかなくとも、洞窟内部の奥深い闇の壁に、宗教的あるいは呪術的に描かれた線刻による壁画には、利害などを超越した芸術作品が表現されている。
そこには人間の尊厳がみえる。人としての品位さえ確立されている。ここには決然とした至高者的物腰がはっきりとあらわれている。
繊細な人類のあけぼのと、芸術の開花とが一致していたことは疑いを容れない。
野生の、しかも優美さをきわめた生命力の放射。生命の息吹きが素朴な祈りの光となってゆらめいている。
人間存在の根源の光。
大自然の本性の光。
その光はじつに冴えて鋭い。この始原の光が悠久の時空を超えて今、私たちの魂に語りかけてくる。
これから私たちはどんな社会や生き方を目指してゆくべきなのだろうか。
このまま科学技術や経済の発展のためのみにひたすら努力していって本当によいのか。
そもそも人間らしさとは…。太古から届く声に立ち止まり、よく訊いてみるべき緊急な事態にあるのではないか。
あの、あけぼのの光を、ふたたびここに創出しなければならないのではないだろうか。

浅川画廊 浅川純至